2022年06月10日

「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  

「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  


食制限やマスクしばりがゆるもうと、二年間余り強いられた引きこもり習慣は、そう簡単には戻らない。相変わらず自宅にこもり古い本のホコリをはたいて読んでいる。そのおかげで良い本に出会えた。フレデリック・フォーサイス編著「翼を愛した男たち」(1997年 原書房刊)だ。



紙カバーの惹句には「飛ぶ能力を与えられなかった人間は、空を征服することが、最後のl偉大な冒険であることを知るや、危険を顧みずに挑み、あるものは生還し、あるものは消えていった…。フレデリック・フォーサイスが愛したそんな男たちの熱い物語。冒険小説ファン垂涎のアンソロジー1」とある、フォーサイスが選んで集めた14編の作者はH.G.ウエルズを筆頭に、エドガー・アラン・ポー、コナン・ドイル、レン・リチャード・パック、デイトン、W.E.ジョンズ、H.E.ベイツ、ロアルド・ダールその他、ボクには初見の作家もあるけど、どれも味わい深い短編だ。
「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  
上の写真は(プラモデルじゃありません)フォッカーDr-1の復元機。ダックスフォードRWMにて

とえばW.E.ジョンズの「スパッドとシュパンダウ」(Spads and Spandaus 熊谷千寿訳)は、あきらかに語呂合わせだが、第一次大戦時のヒコーキ好きならドキドキする題名だ。物語はRAF SE-5複葉機でリヒト・ホーフェン・サーカスと苦戦中のイギリス空軍の基地にアメリカ空軍部隊が応援にやってきた。傍若無人なヤンキーの若者たちが繰るのはフランス製のスパッド戦闘機。イギリス空軍のベテラン小隊長ビグルスは気がきではない。これは映画「フライボーイ」で見た世界だ。
「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  



左の写真は航空機搭載用機関銃 ラ・ブルジェ航空宇宙博物館で撮ったもの






ンチクをはさむ。シュパンダウは当時連合軍に恐れられたドイツの航空機用機関銃。兵器工廠があったベルリンのシュパンダウ区の地名からきた。初めは陸海空軍の汎用機関銃として設計されMG08/15と命名された。(そう言えば昔「08/15」というドイツ映画があったね。最高のモノという兵隊スラングだとか)シュパンダウは布ベルト式給弾で1分間に500発の発射能力があった。しかし頑丈な銃架が必要で4ℓの冷却水を含め60kgも重量があり、空中で飛行士が一人で扱えるシロモノではない。主に陸軍の重機関銃として使われた。


「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  左の写真はミュンヘンのドイツ博物館別館で撮った航空機用改良型シュパンダウ。かなりコンパクトになった。








の後再設計され空冷になり給弾も弾倉式に変わり重量も18kgになった。ドイツ空軍はシュパンダウ機関銃を回転するプロペラ越しに発射できる同調方法を実用化して優位にたった。(すぐに連合軍もビッカース機関銃をプロペラ回転越しに撃てる同調方法を会得した)「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  

上の写真はフランスのブレゲー14 複座偵察機。後部銃手が装備品を受け取っている実物大ジオラマ。機関銃はルイス系の二連式。フランス人はもっぱら円盤型弾倉のルイス式機関銃がお好みのようだった。(ラ・ブルジェ航空宇宙博物館にて)


ュパンダウは宮崎駿監督の「紅の豚」にも登場した。地中海の小島を秘密基地にした一匹オオカミの飛行士ポルコが、夜、ランプの明かりの下で7.92mmモーゼル弾を選別しながら昔話をするシーンがあった。ポルコの愛機はイタリア製サボイアS-21で、このシュパンダウ機関銃を1丁だけ載せている。
「翼を愛した男たち」を読んで「紅の豚」を思い出した。  
の話に戻る。ロアルド・ダールの短編「彼らは永らえず」(伏見威蕃訳)にも「紅の豚」に通じるシーンがある。舞台は第二次大戦後期、パレスチナのハイファに駐留するイギリス空軍の基地だ。哨戒任務を得てハリケーン戦闘機が1機飛び立った。搭乗員はフィン。ところがハリケーンは戻らない。飛行可能な燃料が切れても戻らない。しかし翌日、フィンのハリケーンが何事もなかったように基地に戻ってきた。フィンは仲間に不思議な話をした。空中で針路を失い不思議な光景を見たというのだ。敵味方の無数の飛行機が編隊を組んで静かに蒼空の彼方へ向かっていた、という。数百、数千という飛行機が銀河のように列を成して…。そう。「紅の豚」でポルコが語る回想シーンにあったあの光景だ。空には未知の空間がまだまだあるんだね。(今回は昔話のせいでつい脱線してしまった) 





Posted by はじめ at 07:01│Comments(0)
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